利用者から“学ぶ”ということ──障害福祉の現場から
介護保険のサービスでは、年上の利用者さんから言葉で学ぶ感覚があるかもしれません。
一方で障害福祉は年齢の幅が広く、私より若い利用者や児童もいます。ここでは「教わる」の中心が
会話ではなく“経験”そのものでした。
💭体験談
重度の知的障害のある方と関わる現場では、言葉より行動や表情が答えを示してくれます。
だからこそ、ただ日々を過ごして「自動的に学びが降りてくる」のを待つと、学びは薄まってしまう。
こちらから学ばせてもらう姿勢で一つひとつの場面に向き合って初めて、濃い経験になる——この当たり前に気づくまで、私にはけっこう年数が必要でした。
この記事では、そんな“学ばせてもらう姿勢”で得た気づきを、具体的な体験談とともにまとめます。
高齢介護と障害福祉での学び方の違い
介護保険のサービスでは、利用者の多くが自分より年上です。
「長く生きてきた人生から教わる」という感覚は自然に生まれます。会話の中に学びがあり、言葉で伝えてもらえることが多いからです。
一方で障害福祉の現場は年齢の幅が広く、私よりも若い利用者や児童と関わることも少なくありません。
そこでは「年上から学ぶ」という図式ではなく、一緒に過ごす経験そのものが学びになるのだと気づきました。
例えば、重度知的障害のある利用者は言葉で自分の思いを伝えることが難しいことがあります。
しかし、表情や行動で示されることが多く、その一つひとつが「暮らしのヒント」になります。
ただし、それを「自然に受け取れるもの」と思っていると、学びは薄まってしまいます。
こちらから学ばせてもらう姿勢を持って初めて、深い学びに変わるのです。
私自身、このシンプルなことに気づくまでにずいぶん年数を要しました。
社会参加の現場で得られた学び
社会参加の現場で得られた学び
ホームヘルパーとして移動支援や行動援護サービスを担当していた頃、社会参加の場こそ学びが多いと感じました。
利用者の障害特性に基づいた「本人の物差し」と、通行人やお店の店員といった「社会の物差し」。
この二つをすり合わせていく過程でしか見えないことがたくさんあります。
例えば、利用者と初めて食事に行ったときのこと。
静かな店内で利用者の声が響いたり、大人同士で食事介助をしている様子に、周囲の人が戸惑う場面もありました。
おそらくこれが“社会の物差し”なのでしょう。
けれど、同じお店に通い続けるうちに変化がありました。
最初は戸惑っていた店員さんが、次第に利用者の注文するメニューを覚えてくれたり、取り皿やスプーンを先に準備してくれたり。
その変化を見て、「支援者から店員へ、バトンを渡せた」と感じました。
利用者の立場に立った支援を通して、社会の中に小さな理解が生まれる。
それはまさに、利用者の社会参加が“支援者にとっての学び”でもある瞬間でした。
利用者の人生から学ぶ姿勢
「障害のある方の暮らしを良くしたい」──支援者として、よく耳にするフレーズです。
もちろんその気持ちは大切ですが、私はある時からこう考えるようになりました。
「目の前の利用者さんは、本当に支援者に暮らしを良くしてほしいと望んでいるのだろうか?」 と。
サービスを「提供する」「受ける」というピンポイントの関係にとどまらず、1人の人生に関わらせてもらう 姿勢が大切だと思うようになったのです。
特に印象的だったのは、利用者の過去を知ることが今と未来をつなぐと気づいた経験です。
過去の生活歴や家族との関わりを知ることで、その人の「今の行動の背景」が見えてくる。
そしてそれが、これからの暮らしの支援につながっていくのです。
私はこの気づきを得てから、「計画に書くのが嫌だ」と感じていた新人時代を思い出しました。
あの頃は専門性に自信がなく、書くことが怖かったのですが、
過去を知ること自体が学びであり、未来への道しるべ になると分かってから、支援の見方が大きく変わりました。
利用者は先生、支援者も家族も生徒
ある行動援護サービスで、新しいヘルパーを利用者に紹介する場面がありました。
その時、お母様がこんな言葉をかけられました。
「ヘルパーさんに、うちの子が教えてくれるから。」
私は驚きました。
その利用者は言葉で表現することが難しく、自傷や他害の行動が出ることもある方でした。
「どうやって教えるのだろう?」と、最初は理解できませんでした。
しかし実際に一緒に過ごすうちに分かりました。
走り出すタイミング、落ち着かない状況、自分の思いを行動で伝える姿──それらすべてが「先生としてのサイン」だったのです。
さらにお母様は続けました。
「私たち親も、この子から学ばせてもらっているんです。」
その一言に、私はハッとしました。
支援者である自分も、家族も、利用者が先生。
私たちは同じ生徒として学ばせてもらっている──そんな関係性を共有していただいた気がしました。
この視点を持つことで、「支援している」という一方的な関係ではなく、
学ばせてもらっているからこそ支援できる、そんな相互性のある関わり方に気づけたのです。
まとめ:利用者から学ぶ姿勢が、支援を育てる
介護職は「支える側」と思われがちですが、実際は利用者が先生であり、私たちは学ばせてもらう生徒です。
- 高齢介護では会話から学び、障害福祉では行動や表情から学ぶ
- 社会参加の場は、利用者と社会の物差しをすり合わせる学びの場
- 過去を知ることは、今と未来をつなぐ道しるべ
- 利用者が先生、支援者や家族も共に生徒
こうした気づきは、すべて利用者との関わりの中で得られたものです。
「支援の正解」を押しつけるのではなく、利用者と一緒に答えを探していく姿勢こそが、支援者を成長させてくれるのだと思います。
もし今、介護や福祉の仕事に迷いがある方がいたら、立ち止まって振り返ってみてください。
きっと、利用者からの学びが次の一歩を示してくれるはずです。
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