「辞めてもいい」そう思えたことで、気持ちが軽くなった
「辞めたい」「逃げたい」と思ったことは、何度もありました。
でも不思議なことに、「辞めてもいい」と思った瞬間から、少しだけ楽になったんです。
「続けなきゃ」「辞めちゃいけない」と思っていたときの私は、
まるで自分を縛りつけるように働いていました。
でも「仕事はいつでも辞められる」と思ったら、不思議と「今はまだ辞めたくない」という気持ちが出てきたんです。
自分に“逃げ道”を用意することで、心の余裕ができた。
そこから、私は15年以上この仕事を続けてこられました。
「怖いのは利用者より上司だった」——ヘルパー時代のあの日
ヘルパーをしていた頃、利用者の持ち物を紛失してしまったことがあります。
すぐに上司に報告しないといけない。でも、電話をかける手が震えるほど、怖かったんです。
正直、利用者家族よりも、当時の上司が本当に怖かった。
もちろん、紛失事故はあってはならないこと。
でも「間違ったことは間違い」と、真正面から向き合って叱ってくれた上司の姿勢には、今は本当に感謝しています。
あのときの緊張と怖さは、今もはっきり覚えています。
でも、その経験があったからこそ、「責任を取る」「報告を怠らない」姿勢を学ぶことができました。
「あの“鬼の上司”が退職した日、私は変わった」
怖い上司に支えられていたのは、実は自分のほうだった——
その事実に気づいたのは、上司が突然退職した時でした。
私の背中を押してくれていたはずの存在がいなくなり、
気がつけば私は事業所内のNo.2。責任を背負う立場になっていました。
そのときはじめて、自分の業務の甘さや支援への姿勢の浅さに気づかされました。
失敗もたくさんしました。でもそれは、自分の足りなさに向き合うための大事な機会だったのです。
あの時、上司が退職しなかったら、
私はいつまでも“背中を追いかけるだけの支援員”だったかもしれません。
「“答え”が欲しい。でも支援には“正解”がない」
責任者になってから、非常勤職員との間で意見がぶつかることがありました。
「どう対応すれば収まるのか」「何をすればいいのか」
支援の“正解”を求められることが増えたのです。
でも実際には、行動には背景があり、状況は刻一刻と変わる。
私にできるのは、「こうかもしれない」というヒントを出すことだけでした。
当然、具体的な“やり方”を期待していた職員は苛立ち、
時には私に怒りをぶつけてくることもありました。
でも私は今も思います。
この仕事に“完璧な正解”なんて存在しません。
ただひとつ言えるのは、
間違っていたかどうかは、利用者が教えてくれるということです。
「“正解を探し続ける姿勢”が、支援の根っこだった」
この仕事で求められるのは、
「自分なりの正解を押しつけること」ではなく、
「チームで正解を探し続けること」だと私は思います。
一人の支援者がどれだけ上手でも、
その人だけで成り立つ支援なんて、長続きしません。
現場の情報を記録し、
共有し、
それをもとに「この人にとって良い支援って何だろう?」を
何度でもチームで問い直す。
それができる現場は、たとえ失敗があっても前に進めます。
だからこそ、今つらいと感じる職場があるなら、
「違うチームに出会うこと」も大事な選択肢。
見学、異動、転職――。
“場所”が変わると、見える景色も変わるかもしれません。
「“辞めない理由”より、“辞めてもいい”と思えたことが支えだった」
私は、辞める覚悟ができたときに、
ようやくこの仕事を「自分の選択肢のひとつ」として受け入れられた気がします。
あの頃の私に伝えたいのは、
「今すぐ辞めてもいい。
でも、もう少しやってみたいと思えるなら、それが“あなたの支え”になる」ということ。
今、モヤモヤしている人にとっても、
続けるための理由が見つからなくても、
“辞めたくない”と思えたら、それが十分な理由になるのかもしれません。
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